さて、話は2021年の4月にさかのぼります。
当時わたしは、とある研究発表会の準備に追われていました。
30枚ほどのスライドを使って、経営者のみなさんに『10年後の日本の姿』をお伝えする趣旨でした。
そのための資料を集めている中で、1枚の衝撃的なグラフに出会ったのです。
それは、総務省がコンピューターの発達過程をまとめたものでした。
目にしたのは、ソフトバンクの株主総会の動画(孫正義さんの発表資料)だったと記憶しています。
以下の図が、そのグラフです。
資料としての、細かい前提や分析はひとまずおくとして、2010年頃をさかいに、グラフの形が一気に変わっていることをおわかりいただけると思います。
それまでは、蛇が地をはうようだったのが、2010年あたりから急激に頭が起きて、龍が天をめざすが如くになっています。
わたしは、この図を見て「あぁ〜っ。だから、いろんな変化が速くなっているのか」と、ムチャクチャ合点がいきました。
そして、「だったら、コンピューターの進化にしっかり歩調をあわせないと、ダメじゃん」と深く感じたのです。
『気づくのが遅いよ』という声も聞こえてきそうですが、そりゃぁ、体感的にも『変化が速くなっている』とは思っていました。
しかし、この図ほど、一気に事情をわからせてくれる資料はなかったんですね。
以降、メタバースやNFTアートに向けて大きく舵を切ることになりますが、その最初のきっかけは、このグラフを見たことでした。
今少し、このグラフについて、解説をしておきましょう。
ポイント『指数関数』です。
たとえば、常に値が倍になっていく現象があるとします。
具体的には、以下のような数列です。
1 X 2 = 2
2 X 2 = 4
4 X 2 = 8
8 X 2 = 16
16 X 2 = 32
32 X 2 = 64
64 X 2 = 128
128 X 2 = 256
256 X 2 = 512
512 X 2 = 1,024
1,024 X 2 = 2,048
2,048 X 2 = 4,096
4,096 X 2 = 8,192
8,192 X 2 = 16,384
16,384 X 2 = 32,768
32,768 X 2 = 65,536
65,536 X 2 = 131,072
131,072X 2 = 262,144
262,144 X 2 = 524,288
524,288 X 2 = 1,048,576
最初の方では、一桁台の伸びしかありませんが、20回目の計算時には一度に524,288も増えています。
コンピューターの進化は、まさにこの『指数関数』的でした。
CPUの世界では、長らくムーアの法則(「半導体回路の集積密度は1年半~2年で2倍となる」)が成り立っていましたが、まさにその通りだったんですね。
そして、増加が桁違いになる地点を『ニーポイント/ひざこぞう』と言います。
今一度、先のグラフを掲載します。
2010年頃が、まさに『ひざこぞう』だったわけです。
どうも、そのあたりに『ボタンのかけ違い』があった感じです。