青い街では、サイニック理論を自社(あるいはご自身の活動)に導入するためのお手伝いをしています。
良い文化を持つ企業を見学し、その特徴を自社に取り入れることを「ベンチマーク」と言います。
理論の学習を踏まえたベンチマークは、一般的に『実践』と呼ばれる、オーソドックスな発展手法です。
ただし、その方法にはいくつかの課題もあります。
たとえば、『他社の優れた文化』という種をまいても、それを育てる土壌=社風がなければ芽は出ません。
多くの先進的な組織では活発なブレイン・ストーミングが行われますが、その文化を取り入れるには、自社の根本的な風土改革も平行して行う必要があります。
否定的なマウントを取る人がいた場合、ブレストは即座に失速してしまうからです。
さらに言えば、変化の激しい時代において、改革を『自分ごと』にしてもらうためには、相応の仕掛けが要ります。
本企画『メタ実践』は、サイニック理論の座学とベンチマークをベースとしつつ、上記の風土改革と『自分ごと』へのコミットを同時に行う施策です。
時代性を考慮した、実践プログラム
いつの時代にも「先が見えない」という表現は使われるものですが、2010年頃にコンピューターの性能が指数関数のニーポイントを曲がってからは、本当に予測が難しい時代になっています。
具体的には、AIの急速な発達やメタバース空間の膨大な広がりにより、「最新技術の全体像を把握している人はいない」とすら言われます。
かかる時代において、サイニック理論は希望の光となってくれるでしょう。
何故なら、それは単純な未来予測ではなく、未来について考える思考の道筋をも示してくれるからです。
サイニック理論の3つの特徴
1970年(つまり、今から50年以上前)に、オムロンの創業者である立石一真さんによって発表されたこの理論は、以後60年の展開を示した『未来の羅針盤』でした。
オムロン自体がこの理論をベースに発展した企業ですから、言わば『精度が実証された理論』です。
2022年に、中間真一さんの同名書籍が発売されたことも、耳目を集めるきっかけになりました。
理論の詳しい内容は上記の著作にあたっていただくとして、わたしが考える『サイニック理論』の3つの特徴について記してみたいと思います。
その3つとは……
1:独自視点による歴史研究
2:歴史の周期性への着目
3:未来予測への段階設定/活用法
です。
以下、それぞれについて、詳しく解説します。
1:独自視点による歴史研究
「歴史」と聞いて多くの方が思い浮かべるのは『権力者の交代による時代区分』だと思います。
これは学校教育がそうなっているからですが、『安土桃山時代』と『江戸時代』を分ける根拠は「誰がもっとも強い武力や政治力を持っていたか?」。
もちろん、それはそれで興味をそそる側面はあるものの、疎外感も小さくありません。
何故なら、織田信長も徳川家康も、わたしたちには直接つながっていないからです。
一方、サイニック理論では『技術の発展』を歴史区分に採用しました。
これは、提唱者の立石一馬さんが技術者だったからでしょうが、その区分だと、歴史の親近感がグッと上がります。
発表された1970年までは、8種類の時代に分けられました
たとえば、1765年から『工業化社会』が始まるのは、ジェームズ・ワットが『蒸気機関』を発明したから。
それまで人間や動物、あるいは水や風のような『自然の力』が動力だったのに対し、『熱が力に変わること』の発見によって社会は次のステップに進みました。
『手工業』の『手=人間』から『機械』へと、生産工程のポイントが移ったわけです。
この時代区分がすばらしいのは『実感』が大きいこと。
わたしたちは、今でも熱を動力として暮らしていますから、歴史の恩恵を直接的に受けています。
つまり、権力者の『交代』による歴史観が断絶的なのに対して、技術の『蓄積』による歴史観は連続的であり、リアリティーが地続きなのです。
自己啓発的に言えば、この歴史観は自然に先人への『感謝』も呼び起こしてくれます。
そうした独自視点の歴史の深掘りが、まずは『サイニック理論』の大きな土台であり、確固として視座なのです。
2:歴史の周期性への着目
一方、未来予測に関しても、サイニック理論には大きな特徴があります。
多くの未来予測が『新しい技術の発見』に着目し、直線的な進歩イメージを取りがちなのに対して、サイニック理論は『周期性』に着目しています。
それが名称『Seed-Innovationto Need-Impetus CyclicEvolution/科学が技術の種となり、社会が技術にニーズを与える、円環的な技術革新の進化』に表れる『Cyclic/円環的』という単語の働きです。
直線的な未来予測は、どうしても『情報の獲得競争』になりますが、それだけでは『発想の飛躍』はなかなか起きません。
サイニック理論も新しい技術情報を取り入れましたが、それだけでなく、『歴史は繰り返す』という円環的な歴史観を持ったからこそ、想像力を羽ばたかせることができたのです。
いささか逆説的な現象ですが、『知らないことは、考えられません』。
かつて見た光景を祖型としてイメージするからこそ、未来に対する恐れが払拭されるのです。
その特徴を理解するには、美術史がかっこうの例題になってくれます。
直線的な発達史としてだけ美術史を考えた場合には、印象派からシュールレアリスム(超現実主義)への飛躍はなんだかよくわかりません。
そこに、どんな意図や論理の変化があるのか……
モネからダリへ/明るさから暗さへ
しかし、美術史家のクルティウスが指摘した「ヨーロッパの芸術は明るさと暗さを交互に繰り返す(厳密には古典主義とマニエリスムを繰り返す)」という特徴を踏まえると、出てきた揺れを「あっ、あれか」と感じることができます。
ラファエロからエル・グレコへ/同じく、明るさから暗さへ
ここでもまた、サイニック理論の特徴は『リアリティー』です。
現象の新しさだけに着目すると、理解のアプローチはどうしても恐る恐るになりますが、歴史の繰り返しに着目すると、未来に『懐かしさ』が生まれます。
円環性への着目は、『未来に対する既視感の利用』と言えるでしょう。
3:未来予測への段階設定/活用法
3番目の特徴は、理論自体というよりも、実践への落とし込みです。
サイニック理論では、1970年に100年先の未来を予測しましたが、オムロンさん(というか、立石さん)は『100年後の未来を一気に先取りすること』はしませんでした。
100年後の未来をイメージしつつ、「では、50年後はどうなっているのか?」「5年後などうなっているのか?」という落とし込みをされたのです。
それが、サイニック理論が『SF/Science Fiction』ではなく、ビジネスの実践理論である由縁。
具体例で言えば、研究段階で『人間が運転しなくてもいい、自動運転の車』という未来イメージはできていました。
しかし、それを(マンガや映画として)いきなりつくるのは『SF』。
注:SFはSFで楽しいものです 😊
一方、「そこにいくまでには段階がある」と考えるのがビジネス的な未来予測であり、現実的に必要とされるのは『人間が運転する車の事故をなくすための機械=信号の自動切り替え装置』でした。
あるいは、「いずれはキャッシュレス時代になるが、その前には物理的なお金を自動的に扱う機械=ATMが必要」といった具合です。
一般にはオムロンさんは体温計や血圧計で知られているはずですが、企業としての発展の礎は上記のような自動制御機群でした。
冒頭かかげた時代区分では、『機械化社会』の後は『自動化社会』と設定されています。
以上の解説を2本の動画(前編/22:30、後編/24:24)にまとめました。
この2本の動画をご覧いただくだけで、サイニック理論のすばらしさと先見性をご理解いただけるはずです。
『サイニック理論/メタ実践プログラム』は、サイニック理論を自分ごととして習得 ▶︎ 自社で展開していただく施策です。
既存の理論の遵守と踏襲が『実践』だとすれば、理論の作成過程を追体験するので『メタ実践』と呼んでいます。
具体的には、自分に関係する分野の『歴史研究』と『発想の飛躍』が肝になります。
歴史研究が言わば『発想の根』だとすれば、未来に向けた発想の飛躍や『幹・枝・葉』のイメージです。
カリキュラムは、大きく『課題』と『当日の発表・セッション』『座学』で構成されており、約3ヶ月で運用します。
以下は、受講された方々の感想です。
参加の皆さんの人生史を通じて、SINIC理論を紐といていくのが、とても興味深くわかりやすかったです。
また、アート、クリエイティブ視点での解説は腹落ちしました。
過去の学び、未来を見つめ、今をどう生き抜く(在り方)かに気づかされました。
杉岡さんの解説がとてもわかりやすく、楽しかったです。
ありがとうございました。
殿木達郎さん
参加者の自分史を聞けてその背景を知ることの大切さを改めて感じました。
大きな歴史から学ぶ視点を持つことで、個々の様々な体験経験から導かれている今があり、未来を築いて行く繋がりを考察できました。
川島三佳さん
時間という切り口から、これまでの社会の変遷や人々の価値観の推移、SINIC理論の考え方との関連など、幅広い視点で学ぶことができ、気づきが多かったです。
また、参加者の皆さんそれぞれが、それぞれの人生/経験にもとづきながらよりよい未来をつくる取り組みを進めていらっしゃることがよく伝わってきて、今後のプログラムを通じてどのような実践に結びつくのかがとても楽しみです。
Y・Kさん
杉岡さんが独自の視点で語られる、SINIC理論を歴史の変遷と共に読み解くのは理解を深める起点として本当に素晴らしいと感じました。
時間の概念、循環と矢印の対比も未来を考える上で大きなヒントになると思いました。
参加メンバーの歴史の発表も非常に興味深く面白かったですし、また、各々の発表を聞くなかでコーチングや自己啓発、デザインの遍歴など、重なり合う部分があったこともあり、複数の歴史を重ね合わせることで全体の流れが見えてくる感覚がありました。
まさにメタ実践プログラムの片鱗を感じて今後への期待を膨らませました。次回の課題についても業界内で啓蒙できるレベルまで引き上げたいと思っています。
引き続き宜しくお願いいたします。
高橋剛志さん
・芸術への造詣が深い方が講師であったことに感謝しています。
・コマごとの挨拶(号令)がすばらしい。
・スライドに講師の居住まいがにじみ出ていて感動です。
・3名のグループで学習を進める手法が深い。立体的に理解が深まりそうです。ゼミの進化系ですね。
・この学習スタイルが、回る時間と進む時間の実践そのもののような気がしました。ありがとうございました。
山下明宏さん
人類の時間意識としての変遷という捉え方とSINIC理論を結びつけて考えられていたのがとても秀逸で、よりSINIC理論およびこの世界の進化の過程の理解が深まりました。
SINIC理論の社会実装により、平和志向と目的志向が共に実現できる社会を創造していきたいですね。ありがとうございました。
岩波直樹さん
受講前、自分自身壁にぶつかっていると感じていました。自社の事業、社会に対する浅く狭い見方(平たく言えば低いレベル)のままでは発想が貧弱ですから、そこから生じた計画や行動は、そもそもやっていて面白さを感じず、やる気のスイッチが入り切らない感じでした。
受講の決め手について。SINIC理論については聞き齧った程度でしたが強い関心を持っていました。
説明会に参加した際、講師の杉岡一樹さんが、おそらく奥深いであろうSINIC理論について驚くほどのわかりやすさ(但し薄っぺらくはない)で話して下ったこと。加えてその場でご一緒したメンバーの学び実践していくという清々しいエネルギーを感じ、こういった方々と切磋琢磨したいと感じたことが決め手になりました。
もし本日受講しなければ、来年2月から次の段階に進める自社のプロジェクトについて迷いが残り、エネルギーを注ぎきれず打ち手が後手にまわって目標未達を繰り返し、自信を失っていたかもしれません。
受講して良かったことはいくつかありますが、まずオムロン創業者の立石一真氏の孫に当たる立石郁雄氏(オムロングループ/株式会社ヒューマンルネッサンス研究所 代表取締役社長)とも講座6時間+懇親会まで同じ空間に身を置き、(便宜上よく使われる「未来予測」ではなく)私たち1人1人の未来に対する明るく前向きな意図が重要だという言葉に直接触れられたこと。受講前に「こういった方々と切磋琢磨したい」と期待していたメンバーと講座中何度も話し合い、次回講座(2回目)までの課題の進め方、日程調整までとんとん拍子に完了して、改めて場の力の重要性を体感できたこと。杉岡さんの尽力のおかげで、事前にアナウンスがあったものの不安だった2回目の課題(業界史、地域史)の対象を何に決めるかがほぼ定まったこと(あともうちょっと相談させてください)。
SINIC理論、CSV経営などの知識を得たあと、理想とする企業経営や社会づくりの実践に移りたい企業経営者さんには、ぜひ一緒にやりましょうとお勧めしたいです。
板津 淳さん
自分史に続き皆さんの各々のお仕事の歴史についての発表がどれもクオリティが高く興味深くワクワクするものでした。
自分史、職業についての歴史、2回通して見学者として参加してみて、次は自分がアウトプットしたい、受講したいと思わせてもらいました。
サイニック理論そのものを理解し人に語れるにはまだまだですが、学び実践を繰り返して行く中にもっと理解が深まるだろうと感じています。
自分や事業について見つめ直す機会にもさせてもらえる講習です。
次回も楽しみにしています。
青木麻鈴さん
本プログラムについて「さらに詳しく知りたい」「自社への実施を検討したい」という方は、以下のフォームからご連絡ください。
また、本プログラムは不定期開催となっていますので、「優先的に案内して欲しい」「参加の仮予約をしておきたい」という方も、気軽にご一報ください。